ウォータージェット加工とは?メリットとデメリットを徹底検証!

佳秀工業では、金属・非金属を含めて年間に約400種類の材質の加工を行っています。『金属・素材研究所』のコーナーでは、進化を続ける金属などの新規素材の特徴について解説します。

今回は、当社がさまざまな材質を加工している「ウォータージェット加工」の技術について解説します。

「ウォータージェット加工」とは

「ウォータージェット加工」とは、専用の高圧ポンプで加圧された水を小径ノズルから噴射し、その水(水流)で切断、切削、穴開けなどを行う加工方法です。

当社ではこのウォータージェット加工によって金属の中でも難削材と言われるチタン合金、非金属の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ガラス、大理石、セラミックス、異種の金属を張り合わせたクラッド鋼(圧着鋼)、大型のアルミなどを加工し、航空機部品、造船部品、車両部品、大型の建築ファサード(装飾パネル)などの加工を行っています。

鉄鋼、金属加工以外の業界においても、建設土木分野ではコンクリートはつり*や切断、掘削、穴開け、溝掘り、剥離など、医療分野ではウォーターメスなどでウォータージェットの活用が広がっています。

*はつり…建設現場などでコンクリートで作られた壁や土間などの構造物を壊したり、形を整えるために表面を削ったりすること。

アクアジェット加工とアブレシブジェット加工

研磨剤として使用されるサンドブラストガーネット

ウォータージェット加工には、水流のみで加工を行う「アクアジェット加工」(ピュアジェット加工とも呼ばれます)とノズルの出口付近に粒子状のガーネット(ざくろ石からなる研磨剤で、サンドブラストガーネットと呼ばれます)を混入することで威力を増した「アブレシブジェット加工(AWJ)」があります。

アクアジェット加工はFRP(プリント基板)、紙、ゴムシートなどの軟質材の加工に向いています。アブレシブジェット加工では超高圧水流により研磨材を加速し、加工面に衝突させて加工を行うため、硬質な金属(チタン合金、ニッケル合金、ジュラルミン、インコネルなど)、複合材料(CFRP、セラミックなど)も加工できるようになります。

一般的にウォータージェット加工の加工性は、噴射圧力によって決まります。噴射圧力が高くなるほど研磨材の速度が増大し、運動エネルギーも高くなります。

当社は現在、アメリカのフロー社製の加工機を4台5台保有しています。そのうち3台4台の加工機の噴射圧力(噴射時)が600MPa(メガパスカル)、1台が414MPaです。
(2020年4月保有台数修正)

専用の高圧ポンプで加圧された水流は、φ0.1~0.3mm前後という髪の毛ほどの穴(ウォーターノズル)からマッハ2~3(音速のほぼ4倍)程度の速さで噴出され、その威力は300mm厚以上の極厚材の切断も可能になるほどです。

2019年3月に導入されたフロー社のウォータージェット加工機

ウォータージェット加工の歴史

古来より「水は方円の器に随(したが)う」と言われ、水は器の形に合わせて変化する柔軟な物の典型でした。しかし一方で「水滴りて石穿(うが)つ」とも言われるように、ひと雫の水でも絶え間なく滴り続けると、やがて固い石に穴を開けるほどの力があることも知られています。

古くからの水力の活用事例として、鉱石の採掘が挙げられます。1852年にアメリカのカリフォルニアで水噴流によって鉱石を破砕し、砂利を採取したという記録があります。1916年にはソ連で石炭採掘への応用実験が行われ、1939年には「水力採炭法」として実用化されました。

その後、高圧水発生装置や耐圧ホースの開発が進み、鉱業においての固体材料の精密切削、土木建設業においての剥離・洗浄、汚染土壌の洗浄などにも応用されるようになりました。

1960年代になると、高速水噴流を固体材料の加工に活用する試みが活発になり、アメリカやイギリスを中心にウォータージェット加工機の開発が進められました。
1970年代初期にはアメリカの大型旅客機メーカー・ボーイング社から技術部門が独立する形でFlow Research(現在のフロー社)が創立され、アブレシブジェットシステムの開発に成功しました。

ウォータージェット加工 7つのメリット

①水に溶ける材質以外は何でも切断可能

ウォータージェット加工の最大のメリットは「多様性」です。
軟質材、硬質材、複合材、金属、非金属、通電材、非通電材などのあらゆる材質の加工が可能です。特に難削材や積層材といった加工難度の高い機能材や新規素材の加工に適しています。
また、炭酸ガスレーザー加工機では加工が難しいとされる反射率の高い素材(アルミ合金、銅、真鍮など)やレーザーが不得意な厚みのある素材でも、ウォータージェットであれば問題なく加工できます。
(近年ではファイバーレーザー加工機など反射率の高い金属も加工できる設備が登場しています)

ウォータージェット加工 3つのデメリット

①水に溶ける材質は加工できない

ほぼどんな材質でも加工できるウォータージェットですが、水に濡れて溶けてしまうような材質は加工できません。
また、薄いガラスは水圧で割れてしまう恐れがあるため、ある程度の厚みが必要です。

②レーザー加工よりもコスト高になる場合がある

ウォータージェット加工では消耗材として使用する研磨剤(ガーネット)が高価であるため、レーザー加工に比べてコストが高くなります。
そのため、レーザーや鋸盤で容易に切断できる素材はウォータージェット加工には不向きです。

従来の加工では切断できない難削材や複合材を切断する場合には、ウォータージェットの方が割安になります。また一般的な加工でも、多品種少量、単品生産の場合は、金型が不要なウォータージェット加工の方が安価になるケースもあります。

③機械加工よりも加工精度が劣る

超精密加工に関して機械加工と比較すると、その加工精度は劣ります。しかし、薄物の難削材であれば機械加工と比較してもスピーディーに加工でき、精度を出すことができます。
超精密加工の場合でも、難削材を加工する場合はウォータージェットの特性を活かして機械加工の前工程(1次加工)として使用されることが多く、トータル的なコストダウンを実現することができます。

ウォータージェット加工の将来性

「軽量で高強度」という機能を併せ持つ先端・先進材料の需要が高まっている航空宇宙産業では、従来の工法では加工が困難な難削材(CFRP、セラミックス、ハニカム構造材など)、高脆材、または加工熱によって性能劣化を起こしやすい材料の使用が拡大しています。

こういった材質の加工に最適な方法として注目されているのが「ウォータージェット加工」です。まだまだ歴史の浅い加工方法ですが、進化し続ける「ものづくり」の世界において 今後ますます不可欠な技術となっていくことでしょう。

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〈参考〉
高圧力の科学と技術 Vol.2,no.3(1993)
多軸力情報に着目した、ウォータージェット加工の加工状態認識に関する基礎研究
画像提供(一部):フロージャパン様 https://www.flowwaterjet.jp/

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